【ボドゲ哲学】ボドゲを「楽しむ」初心者は「上手く」なりたいのか?

更新日 2021年5月10日

はじめに~ある悲しいボドゲの話~

こんにちは、いとはきです。

今回は、ボドゲ初心者と“上達”についての話です。この話について考えるきっかけとなったのは、ボドゲ初心者の方による、あるツイートでした。その方は、経験者と思われる方とともに、ボードゲームをする機会があったようです。しかし、その経験者は、頼んでもいないのに執拗に効率的な方法を教えてきました。最初は聞き流していたようですが、一々ゲームの進行を止めて、その方法でやり直すようにまで指示をされたようです。それが度々繰り返されたことで、ツイート主の方は非常に憤慨し、その経験者の方に嫌悪感を抱いてしまったようでした。

さて、この問題に関して、客観的な視点から解釈してみましょう。初心者の方は、“楽しむ”ことを目的としています。それに対して、経験者の方は、“上達させる”ことを目的としているように思えます。それぞれの目的意識の食い違いは、軋轢を生じさせる要因となります。それでは、初心者と経験者の関係から、どのようなことが言えるでしょうか?


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1.初心者は、本当にボドゲが上手くなりたいのか?

初心者の方は、ボドゲが上手くなりたいと考えているのでしょうか。まずは、私がボドゲを始めたばかりの頃を思い返してみます。まず、私が出会ったのはカタンでした。友人は同程度の初心者だったので、お店の方からルールの説明を受けながら、試行錯誤で試していました。初心者ながら、自分で頭を使い、それを実行していく過程が非常に楽しかったのを覚えています。

このとき、私は非常に居心地がよかったです。実は、カタンはこの日3回プレイしましたが、私は1度も勝つことができませんでした。しかし、友人と会話をし、ときにふざけながら遊ぶその時間は大学生の私にとっては非常に有意義な時間でした。

それでは、私はボドゲが上手くなりたいとは思わなかったのでしょうか?それは違います。やはり、私はカタンで負けてしまったことが、少し悔しいという思いがありました。そこで、個人的にネットで攻略法を調べ、次のボドゲ会では見事に雪辱を晴らすことに成功しました。この時の喜びも非常に強かったことを記憶しています。

皆様はどうでしょうか。私と同じような経験をされた方もいらっしゃることかと思います。それでは、問題に立ち返りましょう。私は、ボドゲが上手くなりたいという考えを有していて、ボドゲが上達して相手に勝つことで喜びを感じたという経験をしています。

しかし、私は”楽しさ”があったうえで、”上達したい気持ち”があると考えています。そのゲームが面白いからこそ上達したいと考えるし、そのゲームが魅力的だからこそ能動的に戦略を模索します。このことから、私には、初心者が”上達”することを強要されてしまうと、前提となるべき、ボドゲを”楽しむ”機会が奪われてしまうという懸念があります。

もちろん、ボドゲは勝てるからこそ楽しいという考え方もいらっしゃると思います。そうはいっても、そのような方にも、私のような”楽しむ”ことが前提の方もいるのだと頭の隅に置いていただけるとよいかと考えています。ボドゲに対する考え方は多様なので一様な意見を押し付けることはできないと考えていますが、相手に対する配慮を欠いてしまうと、摩擦が大きくなってしまうことを考えなければなりません。


 

2.経験者は、本当に「相手のため」に教えてるのか?

 

もう一つ論点になるのは、全ての経験者が、本当に”相手のため”を思って、初心者に教えているのかということです。性善説に基づくのであれば、経験者は初心者が少しでも強くなってほしいとの気持ちから、過剰なアドバイスをしてしまったということになります。経験者は、良心を持っていますが、気持ちがすれ違ったと捉えることができるでしょう。

しかし、一部の経験者は、知識や経験の深さを自慢しがたいがために、アドバイスや指摘を行おうとしているような方がいます。その方は、自分が優越感に浸りたいという自らの欲求を満たすことを目的としています。このような自己中心的な方は、ごく少数ではありますが、確実に存在すると考えられます。その方は、傷つけようとしているわけではなく、無自覚的に振舞っている可能性もあります。これは、気持ちのすれ違いではなく、経験者側が自らが”相手のため”ではなく、”自分のため”に行動していることからなります。この場合には、経験者が自粛する必要があるかと思います。

とはいえ、ほとんどの経験者は、”相手のため”を思って行動しているとも思われます。次項では、”上達する”楽しみについて考えていきます。



3「ボドゲが上手くなる楽しみ」はどこから得られるのか?

私は個人的な経験から、ボドゲが上手くなる楽しみについて説明しました。このことを考えると、“上達する楽しみ”があるのであれば、相手が上達するよう積極的に教えることも肯定されるのではないか、と考えることもできるかもしれません。

しかし、私の経験としては、上達する楽しみは自らが望むことで初めて生まれるのではないかと考えています。私は、相手に負けて悔しいという思いがあり、もっと上手くなりたいという意思が生まれました。そこで、自ら能動的に攻略を調べるという過程を経て、実際に相手に勝つことを通じて、ボドゲが上手くなる楽しみを感じることができました。

自ら動く場合と、相手から動く場合とで異なるのは、能動性と過程の二つの要素です。自分から動くから動くからこそ、上達したいという目的が生まれます。また、上達する過程があるからこそ、達成したときの楽しさが生まれます。もし、相手から動く場合では、この双方の要素が喪失してしまうのではないかと考えられます。したがって、私は”ボドゲが上手くなる楽しみ”は、自分から行動し、その努力が報われることによって生まれると考えています。



4.ボドゲ経験者のアドバイスは貴重な資源

当記事では、様々なことを述べてきましたが、ボドゲ経験者のアドバイスは非常に貴重なものです。状況を間違えることがなければ、初心者がさらにボードゲームを好きになるきっかけにもなりえます。ただし、適切な状況は判断が難しいことかと思います。もちろん、初心者からアドバイスを求められた際に応じるのであれば、けっして状況を誤ることはないかと思います。

ただし、初心者と同じゲームをプレイしているときに、経験者側が3回連続で勝利した場合などは、微妙なラインです。その際には、どこか気まずい雰囲気が流れることも考えられます。その時は、適宜、初心者の顔色をうかがうことで解決できるかもしれません。負け続けていても表情が明るければ、ボードゲームの楽しさを味わえていると予測できます。

しかし、少し表情が暗かったり思い悩んでいるようであれば、他のゲームに切り替えてもよいかもしれません。この際に、アドバイスをすることが解決策となる場合もありますが、何度も負けた末にアドバイスをされることが劣等感を生み出してしまうことも考えられるかと思います。

経験者によるアドバイスは非常に的を射たものであることも多いかと思いますが、正しいことを教えることがいつも正しいとは限りません。適切なタイミングでのアドバイスをお願いしたく存じます



5. 初心者と経験者が混ざる難しさ

個人的な意見とはなりますが、初心者にとって最適なスタートとしては、同じ程度のレベルの初心者とともにボドゲを始めることかと思います。この状況下では、スタート地点が同じであるため、ルールの理解度によって勝敗が決まります。また、定石となるような戦略も認知していないため、戦略を自分の頭で考える過程を楽しむことができます。負けてしまったとしても、相手との距離が分かりやすいことから、努力によって相手に勝つということは容易にできます。努力という過程を経て進歩することから、上達する楽しみも味わうことができます。

とはいえ、ボドゲを初心者の方同士で、同時に始めるということは非常に難しいことのように思われます。大学生のような時間がある人物が多く存在している環境に属しているときには、新しいことにチャレンジする人を見つけることは容易かもしれません。しかし、社会人ともなると、既存のコミュニティに属することで精いっぱいとなってしまうことも少なくありません。そのため、このような初心者同士でのスタートは非常に難しいかと思います。

さて、初心者と経験者が混ざることを考えてみましょう。経験者は初心者をリードするという立場上、非常に難しい立ち位置となってしまうということです。もちろん、経験者にとって初心者を率いていくという行為自体も義務となるわけではありません。しかし、初心者がだんだんと慣れていく過程には、繊細な配慮が要されるのではないかと考えています。そんなに気を使ってられないというご意見ももっともですし、経験者の方も楽しんでもらいたいとは強く願っています。ただ、ボドゲの未来を考える中で、初心者と経験者の関わりは議論すべき論点の一つになるのではないかと考えています。



おわりに~ボドゲ経験者である筆者としての視点~

筆者のいとはきは、ボドゲ経験者と自称するのははばかられるものの、やはり初心者ではない人間だと思います。個人的に、初心者の方、特にボードゲームに触れるのが初めてという方と卓を囲むときは、非常にゲーム選びやプレイングに気を使ってしまいます。もちろん、気を遣わずに初心者とボドゲを気楽に楽しむというのも一つのやり方かと思います。しかし、自分が経験者という立場にあることから、初心者の楽しみ方を忘れていないかと常に自問自答してしまうのです。

この記事を書くことを決めてから、なぜ自分がボドゲを好きになったか再考しました。その理由については一言では言い表せませんが、やはり心の交流が大きいかと思います。私は、ボードゲームというツールを通じて、盤面に集中することで、他のプレイヤーと心理的に距離が縮まるような印象を受けました。だからこそ、他のゲームだったらどう楽しめるかを考え、そのうちにボードゲームが家に増えていきました。

今回の記事では、ボドゲ初心者がボドゲを上手くなりたいのかを記述していきました。おそらく、全ての初心者を一括りにするのではなく、個別的な対応が必要かと思われます。しかしながら、ボドゲ初心者の方と卓を囲む際には、相手が何を求めているのかを少しでも考えることが、重要になるのではないかと考えております。

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