更新日 2024年10月14日
こんにちは、yuyaです。皆さん「将棋」というゲームを知っていますか?もちろんほとんどの方が知っていますよね。ではその将棋には多様多種な戦法が開発されており、それぞれに名前がついている事は知っていましたか?
今回はそんな将棋の有名な戦法をいくつかご紹介したいと思います。
将棋をプレイした事がある方はもちろん、初心者の方もぜひこの記事を読んでご興味を持っていただけると幸いです。
「居飛車」と「振り飛車」
まず、将棋の戦法は大きく分けて2種類存在し、最も戦力の高い駒である「飛車」をどう扱うかによって分かれます。
まず、飛車をもとの位置のまま戦う戦法をまとめて「居飛車」と呼びます。
逆に飛車を最初に左右に動かして開戦する戦法は「振り飛車」と呼ばれます。
それぞれ読んで字のごとく、飛車が居座ったまま戦うから居飛車、飛車を横に振ってから戦うから振り飛車です。
また居飛車vs居飛車のことを「相居飛車」、振り飛車vs振り飛車を「相振り飛車」、居飛車vs振り飛車を「対抗形」といいます。
そして居飛車を得意としている方は「居飛車党」、振り飛車は「振り飛車党」と呼ばれます。それでは、ここからそれぞれの戦法をいくつかご紹介します、
居飛車戦法① 棒銀
「棒銀」は居飛車の戦法で最も有名といっても過言ではない戦法です。一説によると約400年前から使用されているとも言われています。
棒銀の一番の特徴は文字通り「銀将」の扱い方。この銀将を飛車の前に真っ直ぐと伸ばしていくことから棒銀と名付けられました。
銀将と飛車で相手陣に攻めていく、という狙いの単純性から初心者向けの戦法と呼ばれています。また素早い攻撃でどんどん押していく戦法になるため、「ガンガン攻撃していきたい」という方にはおすすめです。
一方、その狙いの単純さから守る方法を知っていれば対処も難しくないため、対局相手のレベルが上がってくると簡単には通用しなくなる戦法でもあります。
棒銀の種類には「原始棒銀」や「矢倉棒銀」などが存在します。
プロ間でもしばしば使用されており、「ひふみん」の愛称で有名な加藤一二三さんが愛用した戦法です。
居飛車戦法② 角換わり
「角換わり」もよく指されているメジャーな居飛車戦法の一つです。
対局開始直後、お互いに「角」を交換し、角を手持ちにしたまま戦い始める戦法になります。
特徴としてはやはりお互いに角を持ち駒にしている点。持ち駒にしているということは、強力な駒である角をいつでも自由な場所に打てるという事なので、お互いに角を打ち込まれる隙に気をつけながら駒組みを進める必要があります。
このことからお互いに攻撃的な対局になる事が多く、角換わりの戦法を指し慣れていないと、すぐに潰されてしまうことも。
非常によく指されている戦法なので、序盤戦の多くが定跡化(研究により最善とされる指し方)されていることも特徴で、様々なパターンを覚える必要があります。
角を交換してからの動きにより、「角換わり棒銀」や「角換わり早繰り銀」、「角換わり腰掛け銀」などに発展していきます。
居飛車戦法③ 横歩取り
「横歩取り」は居飛車戦法の中でもかなり激しい戦いになる事が多い戦法の一つです。
飛車先の歩を進めていき、相手の歩と交換した際にさらに横の歩を取る事からこの横歩取りと名付けられました。
横歩取りは飛車や角といった「大駒」と呼ばれる強力な駒をお互いに交換する事が多々あります。結果、お互いがいつでも強力な駒を打つ事ができるため、少しの隙がすぐに敗北に繋がってしまいます。
そのため、指しこなす為にはかなりの研究が必要とされており、初心者の方にはあまりおすすめできない戦法です。
ただ、その迫力ある激しい攻防は将棋の魅力の一つであり、特にアマチュアの棋士には高い人気を誇っています。
振り飛車戦法① 四間飛車
「四間飛車(しけんびしゃ)」は振り飛車戦法の代表格です。序盤に飛車を左から4列目に振ることからその名前が付けられました。
これは四間飛車に限った話ではありませんが、居飛車が全体的に攻め重視の戦法なのに対し、振り飛車は相手の攻めを柔軟に受け流し、駒を上手く捌く(駒を効率的に使うことを指す将棋用語)戦法が多いです。
四間飛車はその最たる例で、相手の攻めに対してカウンターを仕掛けていくようなイメージになります。
なので相手の攻め方によってどう対応するかを覚えておく必要があります。
攻守ともにバランスが良く、初心者にもよくオススメされる戦法の一つになりますが、前述の「駒を捌く」という感覚を掴むまでは負けが続く事もしばしばあります。
ちなみに筆者は四間飛車を愛用しており、駒を上手く捌けた瞬間は将棋を指していて一番楽しい瞬間でもあります。
四間飛車の発展形として、後述する穴熊囲いに対する必殺技の「藤井システム」という画期的な戦法も存在します。
振り飛車戦法② 三間飛車
「三間飛車(さんけんびしゃ)」も四間飛車と同様に、冒頭に飛車を左から3列目に振ってから戦う戦法になります。
名前の似た四間飛車と比べると、三間飛車の方が少し攻撃的な戦法と言われていますが、こちらも相手の出方を見て柔軟に指していく戦法です。
「急戦」と呼ばれる居飛車側から速攻にも対応しやすくなっており、逆に「持久戦」と呼ばれる守りの戦いにも対応できる万能型になります。
三間飛車の中でもいくつか種類があり、古くから指されている一般的な「ノーマル三間飛車」や、攻めの理想ともされている飛車、角、銀、桂をフル活用する「石田流三間飛車」などが有名です。
特に石田流は狙いの分かりやすさや攻めの豪快さから、初級者から高段者まで人気のある戦法になります。
振り飛車戦法③ ゴキゲン中飛車
次は一風変わった名前が特徴の「ゴキゲン中飛車」という戦法になります。
近藤正和さんというプロの棋士が生み出した戦法で、この近藤正和さんの明るい性格からゴキゲン(ご機嫌)中飛車と名付けられたそうです。
近藤正和さんはこのゴキゲン中飛車を使用し、プロデビュー後にいきなり連勝街道を突き進みます。デビューから10連勝を成し遂げ、この記録は藤井聡太さんが2017年に更新するまで最多デビュー連勝記録でした。
ゴキゲン中飛車は主にに後手番(後攻)に使用される戦法で、飛車を真ん中の列に振ってから戦います。
将棋は飛車と角という強力な駒を活かすために、盤上の左右から動き始める事が多いですが、ゴキゲン中飛車は「中飛車」という名の通り、真ん中から駒を動かしていきます。三間飛車よりもさらに攻撃的で、そういった点も振り飛車戦法の中では少し異例の戦法です。
将棋は本来僅かに先手の方が有利とされており、実際にプロ棋士の公式戦でも例年先手番が勝ち越していました。しかしゴキゲン中飛車の台頭もあり、2008年には初めて後手番が勝ち越すなど、将棋史にも大きなインパクトを残しました。
初心者の方にもオススメできる戦法ですが、前述の通り基本的には後手番の戦法になるため、先手番になった際に別の戦法で戦えるようにしておく必要があります。
振り飛車戦法④ 向かい飛車
「向かい飛車」は振り飛車の戦法の一つで、飛車を左から2列目に配置する戦法になります。四間飛車や三間飛車のように二間飛車と言ってもよさそうですが、相手の飛車と向かい合う(相手が居飛車の場合)ことから向かい飛車と名付けられました。振り飛車の中では採用率が低い戦法です。
こちらもゴキゲン中飛車と同様に後手番で指される事が多いですが、稀に先手番が指す事もあります。
特徴はやはり対抗形の場合、お互いの飛車が向かい合う事です。相手が居飛車の場合、飛車先の歩を伸ばしてくる事が多いので、そこを逆襲するカウンターを仕掛ける事ができます。
また、「ダイレクト向かい飛車」という向かい飛車の派生形も存在し、こちらは序盤から激しい攻防戦に変化するケースが多いです。
向かい飛車やダイレクト向かい飛車は採用率があまり高くない為、相手がどう対処すれば良いか分からないまま押し潰せたり、序盤から乱戦に持ち込む事で定跡ではなく、棋力(将棋の総合的な力)で戦う事も可能な面白い戦法になります。
「囲い」について
ここまで様々な戦法について解説してきましたが、ここからは戦法の中でも「囲い」と呼ばれるものをいくつかご紹介します。
囲いとは、守備の陣形のことを指し、一番大切な駒である「玉将」を守る城のようなものです。どのように王を囲うかで、その対局の色がガラッと変わります。
囲い① 矢倉囲い
「矢倉囲い」は居飛車党がよく使う囲いで、単に矢倉とも呼ばれます。
歴史が古く、また非常にオーソドックスで人気のある囲いのため、「金矢倉」や「銀矢倉」、「片矢倉」など、様々な変化形があるのが特徴です。
矢倉囲いの種類にもよりますが、基本的には上方向からの攻めには強く、一方で横方向からの攻めが弱点になっています。
若干手数はかかるものの、しっかりと組む事ができればそこそこの守備力になります。
居飛車党として将棋を指したい、という場合には避けては通れない囲いで、その歴史の古さや格調の高さから「矢倉は将棋の純文学だ」という言葉もあるほどです。
初心者の方にもオススメですが、プロでも多く採用されており、現在でも新たな定跡が発見されるなど、奥の深い囲いになります。
囲い② 船囲い
「船囲い」はその形が玉将が船に乗っているように見える様から名付けられました。主に居飛車の場合に使用される囲いで、最も少ない手数で出来る囲いになります。
矢倉とは反対に、横からの攻めにはある程度強いですが、上方向からの攻めには弱いです。
また、少ない手数で作れる分、守備力は囲いの中ではかなり弱い分類とされています。
船囲いは玉将をしっかりと囲って戦う、というよりは、最低限の防御だけ行い、あとは速攻でどんどん相手陣に攻めていくスタイルです。
また、相手の戦法によって後述する「美濃囲い」や「穴熊囲い」に発展させ、守備力を向上させる事も可能な基本的な形の囲いになります。
囲い③ 美濃囲い
「美濃囲い」は主に振り飛車党が愛用する囲いです。昔の美濃国という国の美しい城にちなんで名付けられたと言われています。
特徴として、前述の矢倉囲いや船囲いは左側に囲いを作りますが、美濃囲いは振り飛車党がよく使用するため、飛車を左側へ振った後に右側に玉将を移動させ、囲いを完成させます。
ただし、近年では居飛車党も美濃囲いを使用するケースもあり、その場合は左側に美濃囲いを作るため、「左美濃」と呼ばれます。
美濃囲いは手数があまりかからない割に相当の守備力を誇り、横からの攻めには滅法強いですが、上部や端が弱点となります。
振り飛車党に大人気の囲いで、筆者も四間飛車と共に美濃囲いを愛用しています。
美濃囲いの発展形として「ダイヤモンド美濃」や「高美濃囲い」、「銀冠」などがあります。
囲い④ 穴熊囲い
「穴熊囲い」は囲いの中では最も強固な守備力を持つ囲いです。
手数はかなりかかるものの、一度完成すれば中々崩すことのできない囲いになります。
熊が穴に潜る様から名付けられたというこの囲いは、玉将を隅に配置し、その周りを多くの駒で守ります。見た目からして強固なのが伝わってきますね。
昔から存在する囲いですが、当時はあまり評価されていませんでした。しかし1970年代頃からその有用性が見直されはじめ、居飛車党がよく使用するようになります。
それまでは振り飛車党には、簡単に組めて守備力の高い美濃囲いがあり、居飛車党は守備力よりも速攻を仕掛けていくケースが多く見受けられました。
しかし穴熊囲いの登場により、居飛車党も強固な囲いを手に入れ、この結果一時期プロの振り飛車党は壊滅状態にまで追いやられたのです。
現在では振り飛車党も穴熊囲いへの対策を編み出していますが、それでもなお強力な囲いとして使用されています。
弱点として、端からの攻撃と、多くの駒を守りに使うために攻撃力が減少する事が挙げられます。
そのため、初心者のうちは穴熊囲いを完成させたものの、そこからどう攻めればいいか分からずに、一方的に攻撃されるケースも多いです。(ちなみにこの事を「穴熊の姿焼き」といいます。)
穴熊囲いの種類には組めれば作戦勝ちといわれる「松尾流穴熊」や、穴熊囲い対策の藤井システムをさらに対策した「ミレニアム囲い」などが存在します。
さいごに
いかがだったでしょうか?今回は将棋の代表的な戦法をいくつかご紹介しました。ここで挙げた戦法はまだまだごく一部であり、他にもたくさんの戦法が存在するので、興味のある方はぜひ調べてみてください。
多くの棋士はそれぞれ得意とする戦法をいくつか持っています。初心者の方は「どんどん攻めたい」「守りをしっかり固めたい」「相手の攻撃を柔軟に受け流したい」などとご自身のスタイルに合わせて、まずは一つ戦法を覚える事をお勧めします。一つの戦法をマスターすれば、初心者の頃とは見える世界が全く異なり、より将棋の魅力に触れる事ができます。
ぜひ参考にしてみてください。