更新日 2022年2月7日
はじめに
「四間飛車」は日本最古の将棋の戦法でありながら、現在も最も多く指されている戦法の一つです。
そのバランスの良さから繰り出される柔軟な戦い方は、プロアマ問わず魅了してきました。
一方で際立った攻撃力や守備力は無いことから、初心者の方はどう戦えば分からずに押しつぶされる、なんてこともあるのではないでしょうか?
今回はそんな四間飛車の特徴や種類、戦い方について解説していきます。
四間飛車の特徴
四間飛車は飛車を左から4列目に振ることからその名が付けられました。
現存するものの中で最古の棋譜(将棋の対局の記録)でも四間飛車が使用されており、歴史のある戦法となっています。
四間飛車の一番の特徴は何と言っても攻守のバランスの良さです。
飛車を左側に配置し、玉将を短い手数で右側に囲うことで、一番大切な玉将を戦場(飛車がいる左側)から遠ざけた形で開戦できます。
そこから相手の攻撃を上手くいなして、飛車や角といった大駒などの交換や相手陣への成り込みを狙っていきます。
この駒を眠らせずに効率よく活用する事を「捌き」と言い、特に四間飛車を指す上では身に付けなければいけない考え方です。
タイトルも取っているプロ棋士の久保利明さんは、この捌きが非常に上手く芸術的なことから「捌きのアーティスト」と呼ばれるほどです。
上手く駒を捌ければ、こちら側は玉将を素早く囲っているのに対して、相手側の守りの薄さの差で勝ちきることができる戦法です。
ただし四間飛車は基本的に相手の攻撃をいなしてカウンターを仕掛ける戦法なので、逆にこちらの駒を抑えられてしまうと、そのまま相手の猛攻の前に潰されてしまいます。
また従来は駒を上手く捌いて守りの差で勝つ、というのが必勝パターンでしたが、昨今では「居飛車穴熊」などといった守りの硬さで上をいく戦法も現れ、一筋縄ではいかない場面をよく見受けられます。
四間飛車の種類
四間飛車の特徴を理解したところで、ここからいくつかある有名な四間飛車の種類についてご紹介します。
▼ノーマル四間飛車
「ノーマル四間飛車」は古くからある一般的な四間飛車を指します。
ノーマル四間飛車は飛車を振った後に角道を止めるのが特徴です。
角道を止める事で相手からの角交換を阻止する事ができ、序盤から激しい攻防戦になるのを防いでいます。
そこから玉将を右側に持っていき、「美濃囲い」という短手数で固い囲いを完成させるのが基本的な戦い方です。
▼角交換四間飛車
「角交換四間飛車」はその名前の通り、本来序盤の角交換を拒否するノーマル四間飛車とは対照的に、こちら側から積極的に角交換を狙っていく戦法になります。
序盤にお互いに角を持ち駒にすることから、角を打ちこまれる隙を気にしながら駒組を進めないといけないので、初心者の方にはなかなか指しこなすのが難しい戦法です。
▼藤井システム
「藤井システム」とは、プロ棋士で四間飛車を愛用している藤井猛さんが編み出した画期的な四間飛車の戦法です。
四間飛車の天敵と言われる居飛車穴熊がプロ棋士間で台頭してきた頃、四間飛車を採用する棋士が大幅に減少しました。
その中で生まれたのが藤井システムであり、従来の序盤戦からは大きく外れた駒組で居飛車穴熊に対して猛攻を仕掛ける戦法となっています。
この画期的な戦法は藤井猛さんの代名詞にもなっており、革新的な戦法に贈られる「升田幸三賞」を受賞しています。
ノーマル四間飛車の流れ
ここからは実際にノーマル四間飛車の駒組と手順、定跡について解説します。
▼ノーマル四間飛車の駒組
まず駒組ですが、初手は角道を開けるために左から3列目の歩を一歩進めます。
相手が角交換を狙ってきたら、4列目の歩も進めて交換を拒否してください。
また四間飛車なので、飛車を4列目に移動させます。
相手が飛車先の歩を5段目まで進めてきたら注意が必要です。
放置すると相手に飛車先を突破されてしまうので、角を7七の地点に移動させて守ります。
ノーマル四間飛車の左側の陣形はこれで完成です。
【図1】
次にノーマル四間飛車を指す際によく使われる「美濃囲い」という囲いを作ります。
玉将を右側に移動させていき、2八の位置まで動かしてください。
その後金将と右側の銀を2段目に上げれば美濃囲いの完成です。
また玉将の逃げ場を広げるために一番端の歩を1マス進める事が多いです。
【図2】
これでノーマル四間飛車の陣形が整いました。
▼ノーマル四間飛車 VS 棒銀
ここからは居飛車の代表的な戦法である「棒銀」に対するノーマル四間飛車の指し方をご紹介します。
お互いに駒組を進め、以下のような状況の場合です。
【図3】
四間飛車はカウンターの戦法なので、まずは相手からの攻めを受けます。
相手は銀将を進めて、銀将と歩で弱点である角の頭を狙ってきます。
この際にぶつかった歩を取ってしまうと、銀将が前に出てきて潰されてしまうので、飛車を3列目に動かして受けます。
相手が攻めてきているところに飛車を動かすのは振り飛車の基本です。
【図4】
ここで相手がぶつかった歩を相手が取り込み、こちらの銀将で取り返した、最もよくあるのが相手も飛車を3列目に動かしてくるパターンになります。
【図5】
このままだと相手の飛車で銀将を取られてしまうので、歩を打つなどして守りたくなりますが、ここで定跡になっている一手があります。
それが6五に歩を進めて相手の銀将を狙う一手です。
ここから相手が攻め合いでこちらの銀将を取ってきた際に目を見張るカウンターがあります。
それがこのタイミングで角交換する、という一手です。
【図6】
相手には王手がかかっているので、成り込んだ竜馬を取るしかなく、こちらは相手の飛車を取る事ができます。
こうなればノーマル四間飛車側が勝勢であり、見事にカウンターが決まった形になりました。
藤井システムの流れ
次に四間飛車の天敵である「居飛車穴熊」に対する戦法である藤井システムの流れを紹介しします。
藤井システムでは右側の陣形は【図1】と同様に駒組を進めていきます。
次にいきなり右側の端歩を突いてください。
将棋の格言に「端歩には端歩」というものがあり、相手が端歩を突いてきた際にはこちらも突き返した方がいい、という意味です。
しかし、相手が穴熊を狙っている際には突き返してこない事が多いので、この端歩は相手が穴熊を狙っているのかを確認する一手になります。
突き返してこない場合は穴熊囲いの可能性が高いので、ここから藤井システムの駒組を進みていきます。
美濃囲いの形だけ作り、玉将を移動させないのがポイントです。
ここから桂馬が跳ねる場所を作り、角道開けて相手の穴熊囲いに備えます。
【図7】
相手が隅の香車を上げてきたら、ここで急襲を仕掛けます。
まず桂馬をさらに跳ねて相手の角を狙ってください。
【図8】
取られてしまうとたまらないので、相手が角を逃したら4五の歩をぶつけます。
ここでお気付きになられたでしょうか?こちらの角が相手の玉将を睨んでおり、相手は歩を進める事ができません。
【図9】
ここからこの角の睨みを武器に相手の穴熊囲いを押し潰せば藤井システムの大成功です。
藤井システムがうまく決まれば、最強の防御力を誇る穴熊囲いも簡単に倒す事ができます。
考案者の藤井猛さんはこの藤井システムを用いて、将棋界でも最も格のあるタイトルの一つである「竜王戦」を三連覇しています。
現在では居飛車側も対策を講じてきており、簡単にいかない事もありますが、それでもなお居飛車穴熊への有力な対抗策として、その破壊力を誇っています。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回はプロアマ問わず人気のある戦法の四間飛車について解説しました。
筆者もこの四間飛車を愛用しており、相手の攻めをいなして上手く駒を捌けた時は将棋を指していて一番楽しい瞬間です。
この「捌き」の感覚を掴むまではなかなか勝てないかもしれませんが、この記事を読んでみて四間飛車に興味を持った方はぜひ練習してみてください。
参考になれば幸いです。