協力型ボードゲームで協力することの難しさ。

更新日 2020年8月17日

はじめに〜協力型ボードゲームは好きですか?〜

いとはきです。

皆さんは、協力型ボードゲームは好きですか?

ここにいう協力型ボードゲームとは、特定の陣営に分かれて協力をする「人狼ゲーム」「タイムボム」のようなものではなく、全員が一丸となって協力をする「パンデミック」「ザ・ゲーム」といったボードゲームを指します。

実のところ、筆者は以前、協力型ボードゲームであまり楽しめなかった経験がありました。正直、もう2度とやりたくないとまで思いました。しかしながら、最近再び協力型ボードゲームを行う機会があり、その際には、非常に楽しい時間をすることができました。

同じ協力ゲームであるにもかかわらず、どうしてここまで異なる体験になったのでしょうか。今回は、筆者の経験に着目し、協力型ゲームで協力することの難しさについて考えていこうと思います。

 

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協力型ゲームの性質と魅力

協力ゲームの性質とはどのようなものでしょうか。例えば、「パンデミック」では、異なる能力を持つキャラクターを、プレイヤー達が操作します。ここで大きな魅力となるのは、話し合いを通じて、全体にとってより良い選択になるように議論できることです。自分のターンでのみ、自分のキャラクターを動かすことができますが、自分のターンでなくともアドバイスは可能です。

このことから、1人では考えが及ばないようなことでも、他の人からのアドバイスを受けて、より広い視野を持つことができるようになることもあります。自分だけで戦略を構築して競う対戦型のゲームとは異なるのは、このような点かもしれません。

また、コミュニケーションが対戦型のゲームより頻繁に行われるのも大きな特徴となります。対戦型のゲームでは、各々が戦略を組み立てるために思考の開示はできませんが、協力型のゲームでは自分の考えた選択を全体に公開していきます。

協力型ゲームは、このように対戦型のゲームにはないような性質と魅力を備えています。

 

協力型ゲームの体験談

さて、このような魅力を備えた協力型ゲームですが、私は、当初は協力型ゲームに対してあまり好意的な立場ではありませんでした。しかし、現在はとても楽しんでプレイすることができています。ここでは、それぞれの私の経験を記述していこうと思います。

 

協力型ゲームを遊んで楽しめなかった経験

私が初めて協力型ボードゲームをした時、一緒に遊んだ方は、ボードゲーム交流会の方でした。手に取ったゲームは「パンデミック」。プレイヤーは4人で、1人が経験者の方、残りの私を含めた3人が初心者でした。全員が初対面な状態だつたのですが、ここで問題が起こります。これが、経験者の方のマウンティングです。私を含めて初心者だったので、判断を誤ることがあります。その度に、経験者の方は「どうしてそんな効率の悪いやり方をするんですか?」「ちゃんと考えてゲームしてます?」など、過度な指示をしてきました。それはアドバイスの域を超えており、ゲームはその経験者の行動を実行するだけのものになっていました。私は、私以外の二人の参加者の顔を伺いましたが、二人ともかなり鬱屈した表情を浮かべていました。

また、経験者の方が最適解を取ることを目指したことで、異常なほどに時間がかかりました。今思い返してみると、『パンデミック』で4時間を使うというのは、考えられないことです。もちろん、時間をゆっくりかけてよりよい答えを探すのは協力ゲームの醍醐味ではありますが、どれだけ思いついたことを話しても、経験者の方に意見が潰されるので、経験者の方の考え待ちという地獄のような時間が流れることとなりました。

4時間の格闘の末、私たちはウイルスの撲滅に成功しました。しかし、歓喜の表情を浮かべていたのは経験者の方だけで、初心者の3人は声では喜びを演じつつも暗い顔を浮かべていました。間違いなく、「パンデミック」に全く罪はありませんが、そのとき、私は「パンデミック」のことが嫌いになってしまいました。残りの2人の初心者も含めて、もう2度と「パンデミック」をやるまいと考えていたでしょう。



 

協力型ゲームでの楽しい経験

初めて「パンデミック」をプレイしてから5年が経ったころ、私には仲の良いボドゲ友達ができていました。そして、「パンデミック」が話題に上がりました。私はほとんどルールを忘れていましたが、嫌な記憶だけが残っていました。しかし、断るのも申し訳ないので、気が進まないながらもプレイしてみました。

すると、驚くことに、とても楽しい時間を過ごすことができました。この卓にも以前やったことがあるという経験者の方はいたのですが、その経験者の方の行動は、5年前の経験とは全く異なるものでした。最初の頃は、操作の慣れない私たちに、考え方のアドバイスをしていました。しかし、ある時点まで到達すると、「思うようにプレイしたら良いと思うよ!」「最初はお試しだから、俺は黙っておくよ。」など、それぞれの意思を尊重してくれるようになりました。

2時間ほど奮闘した後、私たちはウイルスに敗北しました。しかし、プレイ中の議論も、プレイ後の感想戦も、どちらも非常に楽しむことができました。本当に、同じゲームをプレイしていたのかと思えるほど、前回の体験とは全く異なるゲームであるように感じました。



体験の違いについての分析

それでは、どうしてこのように、両者の体験に違いが生じたのでしょうか。ここで、大きく二つの観点から考えてみます。一つは、経験者の存在。もう一つは、目的意識です。

経験者の対応

まずは経験者についてです。協力ゲームをする際に、5年前の経験と現在の経験のいずれにも、以前、このゲームをプレイしたこともある経験者が関わっていました。この経験者が初心者に向ける対応が、ゲームの雰囲気を変えていたと思われます。

5年前の経験者が行なっていたのは、指示とマウンティングです。最適解を導くために、非合理的なものは全て排除し、初心者の意見は全て潰していました。結果として、取引先の接待を行うような環境が出来上がってしまいました。

一方、現在の経験では、経験者は分かっていつつも見守るメンターのような存在となっていました。序盤の動かし方や基本的な考え方についてはアドバイスをしつつ、個人の行動については指示はせず、共通して起こりがちな間違いについては指摘を行いました。このように、現在における経験者の方は後方支援に徹していました。そのため、初心者同士での議論が活性化していました。

 

目的意識の相違

目的意識とは、このゲームをどのように楽しみたいかという要素です。例えば、どれだけ時間を使ってでも最適解を目指すのか、限られた時間の中で許容できる解を見つけるのか。どちらでも、目的意識としては正しいかと思われます。しかし、この目的意識を参加者全員が共有できているのかが問題となります。

前回は経験者のみが最適解を目指し、今回は全員が許容解を目指していました。もちろん、全員が最適解を目指すために、徹底的に議論することは一つの遊び方ではあると思います。しかしながら、前回は経験者の方のみが最適解を目指したことで、このような不協和が生じたことかと思われます。

 

おわりに〜協力ゲームで協力するのは難しい〜

このように、ゲーム自体の面白さが、一緒に卓を囲む人間との関係によって大きく変わるということは、以前も記事で指摘していた通りです。今回指摘したような問題点は、確かに他のボードゲームや、全ての趣味に共通して言えるかもしれません。

しかし、協力型のボードゲームは、その性質をさらに強くします。対面型のゲームであれば、それぞれの価値観で自分の手番をプレイすればすみます、しかし、協力型ゲームでは自分に手番を飛び越えて、議論が生じることとなります。そのため、実質的に協力型ゲームでは価値観のぶつかり合いが生じることとなります。

協力型のボードゲームは、非常に独自の魅力があります。しかしながら、同時に扱いの難しいボードゲームでもあると言えるかもしれません。

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