更新日 2018年3月27日
ボードゲームをしたいという欲求はどこからくるのでしょうか?
ボードゲームをプレイしてもお金が貰える訳でも、生活に必須となるような知識を習得できるわけではありません。しかし、私達はそれでも何度も何度も繰り返しプレイするように動機づけられます。その私達を引き付ける魅力の正体について、組織行動理論の一つである『モチベーション理論』から探究してみましょう。
今回は心理学者であるデシの、ソマパズル研究を用いて考えてみます。
経営学では、私達を引き付けるエサを誘因(インセンティブ)、この誘因を用いてやる気を引き出す行為を動機づけ(モチベーション)と呼びます。現実世界において、私達は様々な誘因によって動機づけられています。それは、お金や休暇といった直接的なものから、名誉や尊厳など間接的なものまで幅広く存在します。心理学者であるデシは人間が何に動機づけられるのかを確かめるために実験を行いました。この実験の核になったのが図で示されているようなソマパズルです。
ソマパズルとは、当時学生の間で流行していた立体パズルです。
用意された7種類のブロックを組み合わせていき、犬や飛行機などの形を作り上げるゲームの一種です。デシは、このゲームを用いて実験を行いました。対象となったのは、ボランティアとして参加した学生です。
まず、学生は大きく二つのグループに分けられます。この二つのグループはそれぞれ別室で実験を受けます。実験の監督者は、それぞれのグループに対して異なる提案を行います。まず、グループAに対しては、与えられたパズルが一つ解けるにつき報酬1ドルを与えます。一方、グループBに対しては、パズルが解けたとしても報酬は一切与えません。
実験の結果、グループ間での生産性に大きな変化が見られました。まず、実験の結果としてグループAはグループBよりも生産性が上がりました。というのは、グループAはグループBよりもパズルを解くスピードが速くなりました。つまり、グループAは金銭的に動機づけられて、生産性が向上したということになります。
しかし、この実験には続きがあります。
実験の監督者は8分の間参加者に休憩時間を設け、自らはその部屋を離れます。そして、ここからが実験の中心となる部分です。監督者は、参加者に対して「自由時間の間は、この部屋で何をして時間を潰してもいい」と伝えます。部屋の中には、ソマパズルのみならず雑誌や玩具などが用意されています。デシが着目したのは、参加者のこの自由時間内の行動でした。
自由時間内の行動では、グループ間で大きな差異がみられました。グループAでは、ほとんどの参加者がソマパズルを解くことに時間を使わず、他の雑誌や玩具で時間を潰しました。一方、グループBではソマパズルを解くことに時間をつかう参加者が多くみられました。
つまり、グループAではソマパズル本来の面白さに対する執着は失われ、ソマパズルは金銭を得るための道具へと変化していました。そのため、休憩時間は他の娯楽へと興味を示しました。一方、グループBではソマパズルを解くこと自体に興味を持ち、休憩時間であってもソマパズルを解くように動機づけられたのです。
この実験をまとめると、金銭的報酬を与えると短期的に動機づけられ、生産性を向上させる。一方、課題を解くこと自体に喜びを覚えると、長期的に参加に動機づけられることになるということになります。
ボードゲームの欲求は、この後者の欲求によるものではないでしょうか。私達がボードゲームをしたいと考えるのは、金銭や報酬によるものではなく課題解決という作業が動機づけの要因になっていると考えられます。
むしろ、ボードゲームをするたびに100円貰えるようになったら、報酬が無くなった際に、ボードゲームに触れなくなってしまうかもしれません。
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