カタンと組織行動理論『経営人仮説』 ~MBA第四講~

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更新日 2018年2月7日

こんにちは、いとはきです。

この度はBoard Game to Lifeにお越しいただき有難うございます。

第四講では、モチベーションやリーダーシップを取り扱う分野である組織論の中から、経営学の基礎となる考え方である経営人仮説について取り上げようと思います。

今回は第一講に引き続き、カタンを題材にしたいと思います。みなさんは常にカタンで合理的な判断をしていますか?『こんなはずじゃなかった』と思う状況に出会ってはいませんか?

カタンには、様々な考えるべき要素があります。

  1. 資源を使って何を建築するか
  2. 開拓地や道をどのように配置するか
  3. 発展カードを引くべきか
  4. 港を確保すべきか
  5. 最長交易路や最大騎士力を狙うべきか
  6. 交渉すべきか断念すべきか
  7. 騎士を誰のところに置くべきか
  8. ……..
  9. ……..

このように、判断すべき要件は多々存在しています。

特に、カタン特有の要素である”交渉”のアクションは、その都度状況に合わせた判断が要されます。例えば、次のような交渉に応じるかどうか考えてみてください。

>>ケース「交渉に応じる?応じない?」



先程ののケースでは、

考えるべき要素に漏れが生じること
選択肢が多く、結果の予想が難しいこと。

そして、相手の発展カードが何かわからないという情報が制限されていることを指摘しました。これに加えて、実際のゲームでは他の参加者の決定が関わってきます。

以上のように、カタンでは、
複数の非合理的な行動が生じます。このような非合理的な行動は、なぜ生じるのでしょうか?

この問題に対して、最初に提示した経営人仮説(経営人モデル)を基にして考えてみましょう。

経営人仮説とは、アメリカ合衆国の経営学者であるハーバート・サイモンが、提唱した概念です。文献によっては、人間モデルともよばれます。彼の提唱したこの仮説を単純化すると、人間が常に合理的な行動を取るとは限らないという考え方だといえます。

これは、経済学で仮定してするような、参加者全員が合理的に動くという考え方である経済人仮説とは、性質が異なるものとなります。



では、サイモンはなぜ人間は非合理的な行動を取ると考えたのでしょうか?
サイモンは、人間の合理的な意思決定を阻害する要因として、彼は以下のような要素を挙げています。

  • 知識の不完全性
  • 予測の困難性
  • 行動範囲の限定性

少し内容が難しいので、具体例として、各要素について再びカタンを題材にあげて考えましょう。

知識の不完全性
知識の不完全性とは、考えるべき要素に漏れがあることです。
資源・ポイント・発展カード・交渉・港等、考える要素が多すぎて、そのすべてを捉えられない場合に、この要素が阻害要因になります。

予測の困難性
予測の困難性とは、選択肢が多いことから、結果の予想が難しいことです。
手元に、全ての建築物のための資源がそろっている時、ポイントのために街を建てるのか。
将来の投資として発展カードを取るのか。
都市を建てて資源獲得を狙うのか。
これらの選択は多岐にあたるため、この結果をそれぞれ予想するのは非常に難しくなります。

行動範囲の限定性
行動範囲の限定性とは、自分以外の参加者が意思決定に影響を与えることです。カタンは、自分だけが合理的に動けば勝利することができるというゲームではありません。他の参加者がどう動くかによってゲームの展開は大きく動いていきます。そのため、自分だけでは動かせない要因が存在します。

サイモンは上記の三つの要素から、人間は合理的に客観的な判断ができなくなると考えました。そのため、合理的になれるのは限定的な場合のみであると考えました。このことから、彼は経営人仮説における人間を「適応人」と呼んでいます。


このように、経営学では人間が全て合理的に動くことを仮定していません。カタンでも、実際の経営でも、非合理的な行動がつきものです。制限された合理性の中でどのように戦っていくのかが、勝利のために必要になってくるのではないでしょうか。


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