『放課後さいころ倶楽部』のレビュー・感想−ボドゲで心が動く話−

更新日 2019年10月4日

概要

『放課後さいころ倶楽部』は、中道裕太さんが作者のボードゲームをテーマにした漫画作品です。作品中では、登場人物がボードゲームを通じ、それぞれ心を開き親交を深めていく姿が描かれています。

本作で紹介されるゲームはどれも実在し、気になったボードゲームがあれば実際に遊ぶことができます。そのため、ボードゲーム漫画として楽しむだけではなく、漫画の登場人物によるボードゲームの評価・レビューも楽しむことができる作品となっています。

ちなみに、この漫画は月間少年サンデーで現在も連載され、現在コミックが11巻まで発売される人気作品となっています。ボードゲームという比較的ニッチなテーマであるにもかかわらず、この作品が多くの方に愛されているのはなぜでしょうか。今回の記事では、11巻まで読んだ筆者の感想とともに、当作品の魅力を紹介します。

 

ベタだけど熱くなるストーリー!!

正直なところ、この漫画を手に取った時、ストーリーについてあまり期待をしていませんでした。というのは、ボードゲームがテーマというところに興味があったため、ゲームの紹介さえあれば十分だと考えていました。しかし、この漫画のストーリーは、期待をはるかに超え、非常に魅力的なものでした。私の好きな話を一つ紹介します

この回は、『カタンの開拓者たち』が題材にしています。右上の男性タケルは、ボードゲームについてあまり関心がなく、ボードゲームを”古臭いカビの生えたゲーム”と馬鹿にします。

 


それに怒ったジョージは、「カタンの勝者が敗者に対して好きなことを命令できる権利を得る」というルールで賭けを提案することになります。

カタンのゲームが始まると、二人は互いにいがみ合っているため、もう一人のプレイヤーであるマイクが非常に有利な状況になります。

だんだんと追いつめられる二人。交渉は二人の間で行われないので、マイクはどんどん有利になっていきます。そこで、タケルマイクに勝たせないようにするために、やむなくジョーとの交渉をはじめます。

 


それまでの敵対関係を忘れ、最大騎士力の奪還のためにお互いがウィン・ウィンになるような交渉を持ち掛けるタケルジョージもその気持ちにこたえるようにして、タケルとの共同戦線に乗り出します。

しかし、そのタイミングは少し遅く、ゲームはマイクの勝利に終わってしまいます。

ゲーム終了後、二人は負けたのはお前の責任だと再び文句を言いあいます。
 


ただし、タケルのボードゲームに対する印象は、180度変わっていました。ゲーム前の発言である、“古臭いゲーム”という言葉を訂正し“最高にクールで、イケてるゲーム”と評します

また、この出会いを通じて二人は仲良くなり、漫画の本編にも大きく影響してくることになります。

 

このように、この漫画ではボードゲームを通じて、人の心が動く描写や人と人とが繋がる描写が非常に巧みに描かれています。ときには、クスっと笑えるような、ときにはウルっと泣かせるような展開がいくつもあります。確かにベタな展開と思うかもしれませんが、だからこそ見る人の感情を揺さぶるようなストーリーになっています。




色々なボードゲームを疑似体験!!!

『放課後さいころ倶楽部』では、軽量級ゲームから重量級ゲームまで多数のゲームが紹介されています。シンプルなもので言えばガイスター、ニムト、カルカソンヌ。重量級ゲームとしてはアンドールの伝説などが登場人物によってプレイされてします。

筆者も無類のボードゲーム好きであることから、ボードゲームの魅力が非常に精緻に描かれています。どの要素が面白く、他のゲームと異なる特徴は何なのか。どの程度の難易度なのか、どのような人と遊んだとき楽しめるのかが、漫画を通じてわかるようになっています。

そのため、次に遊んでみたいボードゲームを発見するためのきっかけになるかもしれません。

 

 


感想

個人的には、非常に満足できた作品であり、今後も継続して購入していきたいと考えています。ボードゲームがテーマなだけではなく、ボードゲームを通じて登場人物の交友関係が広がったり心境が変化していく様子は、巻を経るごとに深みが増していきます。

今回の記事を見て、はじめて『放課後さいころ倶楽部』を知ったという方、あるいは、名前は知っていたけど内容はあまり知らなかった方は、まずは1巻から手を伸ばしてみてはいかがでしょうか?

 

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